がらくたばこ

記憶のがらくた突っ込んでます。それだけです。

ポッキーゲーム

 ポッキーの日、もうほんとに凍えそうに寒いなか、わたしときみは結ばれた。「いっしょにコンビニに寄り道するの夢なんだよね」と呟いてみたら、それが実現した。きみが食べていたのはプリンで、わたしはカスタードクリームの入ったたい焼きを食べた。「毎年ポッキーゲームしようね」って言われて、なんだか恥ずかしくて、「そんなに長続きしてるかわかんないよ」なんて思ってもみないことを言った。結局その約束は二回実行されたんだけど。

 ほんとうにしあわせだった。たのしかった。でもいつのまにかそれは崩れていって、ほんとうのしあわせが何か分からないところにまできていた。

 

「ほんとうにおれのことすきなの?」

 

 素直じゃなかったわたしは、何度もこう訊かれた。そして何度も泣かせた。好きだよ、ごめんね、上手に伝えられなくてごめんねって何度もきみを抱きしめて、でもどこかできみの涙に安心してた。ああ、このひとはまだわたしのことすきなんだ。泣くほど心を揺さぶられてるんだ。腕の中に感じるたしかなぬくもりと、こぼれる涙のせいであつくなった腕に酷く安堵していた。毎度されたこの質問は、ほんとはわたしがずっと訊きたかったことだったんだ、と今ならわかる。きみの口を借りて、きみの涙を借りて、自問自答してた。

 

 それから歯車が狂い出して、だけどわたしはきみみたいに素直に質問はできなかった。だって、解ってたから。すきじゃないよって言われるのが。だからいつだって怖くて、「わたしのことすきになってね」って、そう言ってた。だけど、きみの返事はつれなかった。「当たり前だよ」って返ってきてたはずの答えは、いつしか「頑張るね」に変わってた。

 

「わたしと一緒にいたくない?」

 

 自分が傷つかないように、それでも核心に迫りたくて、そんなわたしが口にする質問はこれで精一杯だった。「別にそんなことはないよ」って答えに安堵して、どうにか一緒にいようとしてた。「一緒にいたい?」とか「好き?」とか訊いちゃうとさ、ほんとの答えが見えちゃうでしょ。でもね、一緒にいたくないのも好かれてないのもほんとは解ってたから、知ってたから訊けなかったの。曖昧な答えに苛立ちながらも、勝手に都合のいいように解釈して自分を慰められるから。

 だけどはじめて「いたくないかもね」と返されたあの夜、いままで以上に酷く安堵したんだ。もうこれ以上無理やり答え合わせしなくていい、頭と心がばらばらにならなくていいんだって。だから、だからね、ありがとう。いつだってきみは素直だった。

 

 いつかまた出会えたら、素直なきみを見習って、ひとつ正直に吐露したい。「約束、また有効にしよう」って。