がらくたばこ

記憶のがらくた突っ込んでます。それだけです。

いぬころ

やっぱり時は情を生む。いい意味でも悪い意味でも。

さいしょはなんてことなかったのに、いつのまにこんなに膨らんでしまったんだろう。誰が膨らませたんだよ、この風船。誰の息で大きくなったんだよ。……たぶんわたし自身だなあ。わたしと、きみと。うーん、きみとっていうのは、ちょっと願望が混ざりすぎてる気もするけど。

 

おたがいにずるくて、悪かった。けど、悪くなりきれなかった。どこかいい子ちゃんな部分もあった。たぶんね、わたしもだけど、小中を優等生で過ごしたんだよね。愛の手に入れかたがへたくそで、とにかく勉強だとか、そういうので親に褒められた。「ああ、こうしたらぼくを好きでいてくれるのか」って、そればっかやりつづけた。顔色伺って生きてきたんだよね、結局。だから嫌われるのが怖くて、悪い子にはなりきれない、ずるくてひどいふたりに成長した。

 

ねえ、おぼえてる?わたしはぜんぶおぼえてる。忘れられなくて困ってる。

きみもそうだといいな。全部すっかり忘れちゃったのかな。だれか知んないけどさ、あたらしい子とは仲良くやってる?わたしもうまくやってるよ。わたしは、最初っからうまくやってる。結局きみよりこっちが大っきかった。ごめんね。でもきみも大きかったよ。こうやって、きみ “も” って付け足しなのが悪いくせだよね。

 

いっしょにさ、バッセン行ったよね。わたし、そういうのどうしても苦手で、見てるばっかでノリ悪かったよね。なんか今日ふと思い出して、そのとき撮った動画と写真探したんだ。けどなかった。グーグルフォトにだってなかった。あー、昔の自分、めっちゃえらい。ちゃんと消してた。きみにも送ってないから、もうわたしの記憶にしかないね、あの姿。

 

いっぱい歩いた。ぜったい車道側あるいてくれた。やさしいね。だれにでもやさしい、って振られただけあるね。うん、ほんと、だれにでもやさしいよ、わたしも思う。

帰りみち、遠回りしよって見たことない道歩いたりさ。コンビニの前の喫煙所ではなしたり、あ、海外のひとに声かけられてタクシー呼んであげてたね、ほんとやさしい。やさしいとこはあんますきじゃなかったけど。でも、わたしはいつも、きみのやさしさの煙に巻かれてた。まっしろのなかで、なにも見えないふりしてた。

歩道橋も登ったねえ。わたしが景色見るとさ、かわいいって言ってくれて。ぴょこぴょこ歩くのもかわいいって言ってくれたし、タタタッてはしって振り向くのもかわいいって言ってくれたし、あー、あー、あー。またかわいいって言ってくんないかなあ、嘘でいいから。駄目だね。やっぱだめだよ、誰にでも言うのはやめときな。年上が言うんだから、守るんだよ。ね。むりだろうけど。

 

はじめてさ、男のひとの肩幅ってしっかりしてるんだ、とか、そういうの知った。きみのかすれた声がすきだった。嘘くさい笑いかたがすきだった。嘘みたいにわらう。たぶん、きみなりの自衛だったんだろうとおもう、生きていく上での。敵作りたくないくせに敵作るようなことしてみたりさ、ほんとばかだなあ。ばかだよ。わたしもきみも。

楽器倉庫、は、もうぜんぶ詰まってるね。あそこはわたしにとって、きみ一色になってしまった。ギターじゃなくて、ベースじゃなくて、楽器じゃなくて、きみとの思い出をしまっておく倉庫だった。卒業したからもう行かないし、そのタイミングで思い出ともさよならするべきだったのかもね。できたのか、一応。わかんないなあ。教科書置いたりするたびに思い出してたけど、きみはどう?そんなことなさそうで悲しいな。あと半年、いっぱい倉庫つかってよ。

 

んー、なにが言いたいんだろう。わかんなくなってきた。

 

ほんと最低なこと言うけど、人生でいちばん興奮したのは、きみとの公園だった。ぜんぶどきどきした。はやく、はやくってつづきを待った。でもずるいから言わなかったし、きみも傷つくのを恐れて、けっきょくつづきなんてこなかった、連載打ち切りだった。ばちがあたったんだなあ。

 

 

あのね。たぶん、すきだったっていうより、依存してた。

依存されることにも依存してたし、すぐ電話出てくれて、けっきょくわたしの元へ帰ってくるきみにあまえてた。

お互いずるいよね、おわらせなきゃって言いながらぜんぜんおわらせないんだもん。あーあ、おわらせたのはわたしだった。おわらせたくせにこんなタラタラ綴るなよ。けど、ほんと、いい思い出だよ。

 

だけどこれはぜんぶ思い出補正で、美化で、じっさいはそんなことなかったんだろうなって  ちゃんと胸に抱いて   

終着点のないまま文を終わります。

 

おわり